殺青(さつせい)・・・加熱し発酵を止める
室内萎凋、撹拌を繰り返した茶葉の発酵を止めるため加熱機に茶葉を入れる。この加熱機はドラム缶のような形で中はグルグルと回る。これは昨年の烏龍茶と同じ工程だが、東方美人は低い温度でゆっくりと回していく。繊細な茶葉が壊れないようにゆっくり、じっくりまわすのである。
「何分位回すのですか?」と尋ねると 「時間では計れないんだよ。見て、触って、匂いを嗅いで、乾燥具合を見るんだよ」と言われた。 その言葉どおり、林先生は時々加熱機の中で回る茶葉を懐中電灯で照らしながら覗き込み、手に取り、香りを嗅ぐ。乾燥の具合は手で握って感じ取っている。
静置回潤・・・濡れた布に包み、蒸らす
殺青が終わると静置回潤である。これは東方美人独特の手法かもしれない。このまま次の工程である揉捻をすると茶葉がパリパリで壊れてしまう。そのため殺青された茶葉を濡れた布で包みバケツの中へ入れ20〜30分ほど休ませる。すると茶葉の中に残っている水分によって蒸されて茶葉が柔らかくなる。濡れた布から水分を吸い取るのではないそうだ。濡らすのは布の目をふさぎ、外に水分が出て行かないためである。熱を持った茶葉はバケツの中心から外へと水分を出し、しっとりとしてくる。
揉捻・団揉・玉解(だんじゅう・たまとき)・・・烏龍茶を球体に形成するための工程
静置回潤によってしっとりとした茶葉を丸く包み揉捻機にかける。ボール状にした茶葉を上下で挟み込み圧力をかけながらグルグルと回す。こうすることにより、茶葉を整形していくのである。
しばらく団揉をすると、次は玉解である。この袋を開けて、加熱機に茶葉を移す。今度は加熱機の温度は上げずに、団柔により固まった茶葉をもう一度バラバラにするのである。これが玉解。揉捻、玉解、これを2〜3回繰り返す。
「東方美人も揉捻、玉解をするのですね。丸まった形じゃないからそのまま乾燥するのかと思っていました」
「これ飲んでごらん」一杯のお茶を手渡された。 「どう?」 「東方美人だけど。水色が薄いみたい。それと、味のインパクトが薄い」 「これが揉捻していない東方美人なんだよ。そう、水色が薄くて、香り、それに最初に口にしたときのコクが少ない。そして、3煎位しか出ない。ちゃんと揉捻すれば8煎〜10煎まで出るからね」 「大変だけど大事な作業ですね」 「いや、それでも東方美人は3回位。春に分けた四季春。あれは40回繰り返したんだ」 「40回!!」私には気が遠くなる回数だ。