| 「私たちさ、働く時期を間違えたよね〜」
「それを言うなら生まれる時期を間違えたんだよ」
「今、あの頃の若さで働いてたらね・・・」
「私たちの時代ってチョウ・ヨンピルと桂銀淑しかいなかったよね・・・」
ハァ〜〜〜
このところ同期で集まると、決まってこの話と溜息で時間が過ぎる。そう、私たちが働いていたエアラインは、今や「韓流」ブームで飛ぶ鳥を落とす勢いのあの「大韓航空」だ。テレビで「韓流スター来日!」というニュースが映れば、懐かしい空色の機体が画面に映し出される。
「あぁ今回はヨン様を乗せてやってきたのね・・・・」
私は別にヨン様のファンではない。でもさ、もし客室乗務員として1時間ちょいでもヨン様のお世話をしたら、親戚のおばちゃんたちに大いに自慢できるじゃないか! それに外国人のメリット生かして、「サイン チュセヨ・・・」(サインください)なんて簡単に言えちゃえそうじゃないか。例えばJALで日本人乗務員がキムタク相手に「サインください」なんて立場上頼み辛いが、もしチェ・ジュウ似の韓国人乗務員が「ワタシ、アナタのファンデズ。サイン イイデスカ?」とタドタドしい日本語で言ったら、「まぁいいか」とサインをくれそうじゃない? えっ? 誰がチェ・ジュウだって? それにチェ・ジュウ似の乗務員なら国籍問わずサインを貰えるって? まぁそうかもしれないけど・・・さぁ。それから、もし機内でヨン様と2、3会話を交わしたなら、それがどんな内容だろうが、女性週刊誌が記事を買ってくれそうじゃない?
「客室乗務員告白! 私だけが知る機内のペ・ヨンジュン!」
なんて見出しで、発行部数が上がりそうじゃん。「ヨン様は、やはり機内でも紳士的でした。微笑みの貴公子の言葉どおり、白い歯を出され、いつも笑顔で私ども乗務員にもとても親切で・・・。わたくしがファンと申し上げますと、胸元から自身の写真を出され、そこにサインして下さいました」それだけで、今なら十分記事になるはずだ。
あぁ・・・私たちが働いていた頃はさ、スターといったら「釜山港へ帰れ」のチョウ・ヨンピルだもんね・・・。チョウ・ヨンピル、桂銀淑なら何度も機内で見たわよ。(自慢にならないって?)
そうそう、こんなこともあった。ある日「きゃーーーカッコいい〜」と韓国人乗務員が騒いでいたので見ると、背ばかり高い冴えない男性が集団で乗っていた。何か襟足だけ長くした「カブト蟹」みたいな髪形を一様にして、「俺たちカッコいいぜ」と言いたげに座っていた。何者じゃ彼らは? 後で聞いたら韓国代表のサッカー選手だという。そりゃ韓国のサッカー選手となれば、スターだ! みんなの憧れの的だ。しかし、それが韓国のサッカー選手のステータスシンボルなのか皆そのカブト蟹ヘアーをしており、なんだか少林サッカーならわかるけど・・・と理解に苦しんだ私。勿論どこを探したってアン・ジョンファンのようなカッコいい選手は見つからなかった。(えっ? もしかして、あの中にカブト蟹ヘアーしたアン・ジョンファンも混じってたのか?)
それにまだ韓国人が頻繁に海外に行ける状況ではなかったから、乗ってるお客さんはお金に余裕のある高齢のご夫婦か、日本に出稼ぎにきているお姐さんとビジネスマンくらい。ビジネスマンだって、あの頃の韓国の男性は(本当に申し訳ないが)垢抜けていなく、どこを探したってスーツをきたイ・ビョンホンとかチャン・ドンゴンやウォンビンなんていなかったもんね・・・。当時よく韓国人乗務員に聞かれたことは「何で日本の女の子は綺麗な子があんまりいないのに(相当失礼な発言)何で日本の男の子ってあんなにカッコいいの?」と。私はいつもこう答えてた。「(そりゃあんたたち韓国の女の子は小まめに整形してるじゃん、綺麗なはずよ!!)韓国の男の子はまだおしゃれに目覚めてないだけで、そのうち韓国の男の子もおしゃれに目覚めるときがきたら絶対にかっこよくなるはずよ!」
悔しいけど、動物は男(雄)の方が本来綺麗なんだそうだ。高校時代の先生が言ってた。「鹿だって孔雀だって何だって動物は雄の方が綺麗でしょ。それは子孫繁栄のために雌を誘わないといけないから。でも、人間は女の方が綺麗と言われるでしょ? それは化粧とかファッションとかに目覚めたからよ」確かにそうかもね。では、一体いつ韓国人男性はおしゃれに目覚めるのか? 私たち同期はそれを確かめることもなく大韓航空を辞めてしまったのだった。
そして、時が流れ、韓国の男性たちもおしゃれに目覚め、そして私たち日本人をも魅了する韓流スターが誕生! それを真似する普通のお男の子たちだってステキになった。。
元々ロマンチックで強引、軍隊経験により逞しく、でもって儒教の教えからか男気のあるて強くて優しい韓国人男性がお洒落に目覚めてしまったのだ、日本人女性が彼らに心奪われるのもわからなくない。
残念ながら私は韓国人男性と付き合った経験がない。でも、1度だけ韓国人男性に口説かれた? ことがある。それはまるで冬ソナを地で行くような、私の自惚れ自慢話の1つである。聞きたくないって? だめよ、ちゃんと聞いてもらうわ!
韓国ドラマ 愛の劇場 「トランクにつめて・・・」
日本人が乗らなくてもいい路線LA→SEL便。お客さんの殆どが韓国人で、その日も出発前のブリーフィングの時、「日本人客は1名」とパーサーから言われた。「何でこんなフライトスケジュールをつけんのよ!」同じフライトに当たった同期のYとブーブーだった。しかし、今になって思う。これは神様が私にくれたプレゼントだったのだと・・・。(おいおい、すっかりドラマの世界に入ってるよ)
Yはビジネスクラス担当で、私はエコノミークラスだった。私はドリンクサービスをしながら、どの人が日本人なんだろうとお客さんの顔を見ながら、探していた。名簿を見ればすぐにわかるけど、長いフライトだ。退屈しのぎに自分の勘で探すのも楽しい。ある席に来たとき、「あっ間違いなくこの人だ」という男の子がいた。顔は藤井フミヤ、いやパク・ヨンハに似ていて、服装も垢抜けている。ところが、彼は朝鮮日報という韓国の新聞を読んでおり、私に飲み物をオーダーするときも韓国語を話した。「こんな垢抜けた韓国人もいるんだ。きっと留学生なんだな」と私は思った。
お客様のお食事も終え、後片付け等していると、さっきの韓国人の男の子がマガジンラックの前で雑誌を探していた。「イルボン ザプッシ オプソヨ?(日本の雑誌ない?)」彼は私に韓国語で聞いてきた。彼はやっぱり日本人だったんだ。韓国語が得意だから朝鮮日報とか読んでいたのね。「日本の方ですか?」「えっ?」彼は私のネームプレートを見て「あぁ日本人のスチュワーデスなんですね。僕は韓国人ですけど・・・」少し訛りがあるけど、でも綺麗な日本語でそう答えた。
そして、彼は立教大学に留学生していて、池袋に住んでいたこと。今は韓国に住んでいるけど、日本が大好きでまた住みたいと思ってることとか、日本での楽しい留学生活などを話してくれた。名前は確かパク君だったと思う。
LA→SEL便はフライト時間が長くて退屈なんだけど、そのフライトはパク君のお陰でとても楽しく過ぎて行った。彼はいづれ韓国にIKEA(スェーデン発のDIYshop、日本でも2006年にザウス跡地にオープンするそうだ)のようなDIYのshopを作るのが夢だと話してくれた。「今韓国人は時間に余裕がない。自分たちの生活で一杯一杯なんだ。そのうち国も裕福になって、韓国人の中にゆとりというものが生まれたらきっとDIYが流行ると思うんだ」パク君は目を輝かしてそう言った。
「家はどこなの? ソウル?」と私が聞くと「うん、江南(カンナム)」「えー、すごいお金持ちだね」そう、江南は東京で言えば田園調布のようなところでお金持ちの家が沢山ある。私たち外国人乗務員の滞在ホテルが江南にあったのだが、ホテルの上階から見えるのは豪邸ばかり。ドラマ「美しき日々」の室長宅のような家が並ぶ高級住宅街だ。私がそういうとパク君は「ううん、父が金持ちなだけさ。僕のお金ではないからね・・・」まるでちびまる子ちゃんの花輪君のように肩をすくめてそう言った。まぁこの台詞は得てしてお金持ちのご子息が使いたがる台詞なんだけどね。パパのお金といいながら、スポーツカーとか乗り回しちゃうあたり、矛盾しているんだけどさぁ、でも、女はこの台詞に弱いことは確かなのよね。トホホ・・・。
パク君が飛行機から降りる間際に「今日さ、一緒にご飯でも食べに行かない?」と誘ってくれた。しかし、私は結婚していた。
♪せっしゃギター侍でござる。残念〜〜〜!!♪
そう、パク君が私に深入りする前に、きっぱりと断らなければいけないわ。まだ恋は始まってないんだから・・・増井ゆかりは自分に言い聞かせた。(←すいません、人生1度はこんな台詞言ってみたかったもんで・・・かなり酔いしれてます)
「ごめんね、私結婚しているんだよね」ここは常々疑問に思うところなんだけど、ただご飯を食べに行こうと誘われた。こういうときはどうすればいいのでしょうか?
「ごめんね、私結婚しているんだよね」なんていうのは自惚れか?
「それが? ただ食事に行くだけだもん、関係ないでしょ?」とさらりと言われちゃったら?
しかし、仮に気軽に食事に行った後、「付き合って下さい」なんて言わたりしたらどーするよ?
「えっ〜私結婚しているの・・・ただ食事くらいならいいと思ってぇ〜」と、体をくねらせながら上目遣いで甘ったるい声を出して許されるのはさとう珠緒だけだ。間違えない!!
私は自惚れと思われても、後でややっこしくなるよりはマシと思い
「ごめんね、パク君私結婚してて〜」と断ったのだった。えらいじゃん、私って! ヨッ! 人妻の鏡!(そーゆー問題か?)パク君は「本当? 嘘だ。嘘でしょ?」と言いながら、飛行機を降りて行った。後で前方のビジネスクラスにいたYが「男の子が降りるとき増井さんは結婚しているんですか? と私に聞いてたけど・・・」「で、で、Yなんて答えたの?!!!?」「えっ? 本当のことを言ったけど、何かまずかった?」まずくないけど・・・まずくは・・・。
ホテルに帰って、部屋で寛いでいると電話が鳴った。出るとなんと、パク君だった。
「ど、どうしてホテルがわかったの?」
「友達の韓国人スチュワーデスにどこのホテルに泊まっているか聞いたんだ。江南だったんだね。僕の家から近いじゃない。これから一緒にクラブにでも行かない?」
「あの・・・私結婚しているんだけど・・・」
「ハハハ・・・、僕は信じないから」キャーーー、これは現実か? 受話器を持った反対の手で思いっきり頬をつねってみる。痛いわ〜♪(≧▽≦) ここはスクリーンの中?
「あ・・・あのごめん、明日、朝1番のフライトで5時に起きないといけなくて・・・今から遊びには行けないわ・・・」
「ちょっとだけでいいじゃない」
「でも・・・・」ごめんなさい。これを読んで下さってる皆さん、さっきから楊枝シーシーの「聞いてられない」モードでしょうね。でも、叶姉妹のようにこんな言葉を毎日浴びるような生活をしているわけではない私、というか、こんなにしつこく誘われた経験は後にも先にもこのときだけだもん、もう少し読んでよ。これが韓国男性パワー(しつこさ)なのね。韓国の女の子はよく言っていた。「男性にデートに誘われてすぐに行くのはダメ。3回は断ってからじゃないと」と言ってたっけ。正直、独身だったら「GOGO〜」だったけど・・・頭の中には旦那の笑顔がチラチラ現れ、私は丁寧に「斬り!!」(おぉ・・・・)
電話がなっていた。「はい・・・」と出ると「GOOD MORNING! THIS IS YOUR WAKE UP CALL」の声。「あの・・・私モーニングコール頼んでないんだけど(一応英語)」で答えると、「ハハハ・・・僕だよ。朝5時に起きると言ってたから起こしてあげようと思って」キャーーーーー、韓国人男性、憎いね、このーーーーである。「わざわざ、あ、ありがとう・・・」「今日、日本に帰るんだね。いいな、僕も一緒に行こうかな」おぉ・・・。「うん、でも、多分この便はいつも満席だから・・・」だめよ、私は人妻・・・・。パク君が一緒に来たいなんて言われても困るのよ。(ごめんなさい、パク君によってすっかりチェ・ジュウ入ってます)するとパク君は言った。「君と一緒に行けるなら、君のトランクに僕が入って日本に行こうかな」キャーーーーーーー!
正直、私はその日、朝から有頂天だった。いつもは眠気眼で乗務するのだが、この日はランラン♪ 目の中に星が1万個散りばめられているように輝いていた。日本に帰ったら皆に自慢してやろう! そうだ、旦那にも勿論自慢するんだ。さぁさぁ、あんたが忘れかけてる妻の魅力を思い知るがいい! メラメラ〜
意気揚々、私は日本に帰り、早速、旦那を始め、kaoや友達(大勢!)に語り部のように伝え回った。
「結婚しているって何度も話したのに、ハハハ・・・僕は信じないから! だってーーーーーーー!!」(≧▽≦)
「トランクに入ってでも私のフライトで日本に行きたい! だってーーーーーーーーーーーーーー!!」(≧▽≦)
ところがどーよ、皆なんて言ったと思う? 皆一様に「作ってる! あんた! かなり作ってる」と言ってハナから相手にしてくれないのだ。絶対にありえないと信じないのだ。「映画じゃあるまいし、そんな歯の浮くような台詞言う奴がいる? それもあんたに!」
いたのよ! いたんだってば! 確かにね、言われた本人も、自分はそこまで言われる価値のある女なのか? 自問自答していたもん。パク君あんた女を見る目あんの?
しかし、韓流ブームで韓国ドラマや映画がどんどん日本に入ってきた今なら、わかるでしょ? 日本では歯の浮くような台詞も盛り沢山の韓国ドラマでしょ? ヨン様のインタビューだってすごく芝居じみてるけど、それをさらりと言いのけちゃうじゃない? それにおばさまたちはドスーン! ドスーンとバズーカ、胸に打ち込まれているでしょ?
今ならきっと信じてもらえたのにさ。やっぱりこれも言う時期を間違えたのね。
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