| 先日のこと、朝事務所で会うなりkaoが言った。
「ねぇねぇ、昨日深夜にやっていたメンタルERって番組見た?」
「見てないね〜何時から? もう寝てたね・・・何なの、その番組って」
kaoが言うには、何らかの悩みや行き詰まりを持った人が催眠術の退行催眠で自分の前世を見に行き、今まで自分を縛ったいたその原因を探るという趣旨の番組だったそうだ。
ある人は3という数字が物心がついたころから怖くて、例えばグラスに氷が3つ入っているだけで怖いし、本棚に漫画がずらっと並べられていても3巻だけ怖くて見られず伏せられているとか、常に3という数字を手で隠しながら今まで生きてきたのだそうだ。何故自分は3が嫌いなのか、その理由もわからず、ただただ3に怯えながら生きてきた。それは何故か? それを催眠術を使ってその謎を探っていったら・・・。催眠術に掛かり、その人はずっとずっと前世に遡る。
ここからは番組を見たkaoから聞いた話を元に再現。
隠れている。アンネ・フランクのように何者かから隠れ、怯えながら生活している。
見つかってしまった。連れていかれる・・・。ここは収容所?
男が言った。「今度からお前たちを番号で呼ぶことにする」
一人一人腕に焼印を押されていく・・・。私の番がきた。怖い・・・。いやだ!
ジューーー・・・・。
私の腕には焼けるような痛みと「33」という番号が入れられた・・・。
今まで3に縛られていた彼女、今までその原因がわからず、ただただ3に怯えながら生きてきたのだが、退行催眠によってその原因が前世にあることがわかった。だから、彼女は物心がついたときから、その前世の記憶に縛られて3という数字に異常なまで恐怖心を抱いていたのだ。また催眠療法によりその恐怖の原因がわかると、その後の人生において今までのような恐怖心は抱かなくなるんだという。
「yuka、あんたも出してもらいなさいよ! あんたの怯えている原因、絶対に前世にあるっていつも言っているじゃん!」
本当にそうだ! 知りたい! 私のこの怯えの原因を!
そう、私の心の怯え、それは「蝶」。
物心ついたときには、私はもう怖くて怖くてたまらなかった。
一番幼い時のその恐怖の体験の記憶というのは、幼稚園のときだ。お隣の久美ちゃんと久美ちゃんちの畑で遊んでいたときだ。肥えた盛土があって、そこに登って遊んでいたとき。その盛土の上に私の恐怖の元凶・蝶(モン白蝶)が死んでいたのだ。(今これを打っている手も震えている)
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
私の声に久美ちゃんも半分泣きそうになって「きゃーー、どうしたのーーーーー?」私はワンワン泣き、震えながら「これ、これ・・・」と蝶の方を指さした。すると久美ちゃんは「もーーー! 蝶くらいでそんな! びっくりさせないでよ!」と怒って家に入ってしまった。
その時、幼いながら思ったのですよ。どうして私は蝶がこんなに怖いのかと。でも、わからない。とにかく怖くて怖くてたまらない、見たら心臓が凍りつくくらい怖くて、冷たい血が全身を駆け巡るのがわかるのだ。
それですごく不思議なんだけど、蛾はいたって大丈夫というところ。蛾は大好き! というわけではないけど、蝶が飛んでいたら
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
なのだが、蛾だったら
「ふぅ〜ん」
くらいにしか思わない。「羊たちの沈黙」という映画があるけど、あの宣伝ポスターとかDVDの表紙って、主演のジョディ・フォスターの口に大きな蛾が張り付いているでしょ? あれなら全然OKなんですよ。ジョディの代わりに私にだってできる。しかし、あれが蝶だったら?
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
申し訳ないけどジョディの代役話はお断りしないとならない。(大丈夫だって、そんな話あんたにゃ来ないから!)そう、そして長い間不思議だったのが、蝶と名のつく「シジミ蝶」なんだけど、これだけは子供の頃から何故か平気だったのね。小さいから平気なのかなと思ってたんだけど、これが大人になって名前はシジミ蝶なんだけど、本当は蛾の一種であることが判明。ますますミステリアスでしょ? 私の中に組み込まれている何かが蝶と蛾をきちんと選別していたってことじゃない?
子供の頃、こんなこともあった。蝶嫌い、いや、蝶恐怖症の私はアゲハ蝶(蝶の中でもこれが一番怖い。今書いているだけで冷たい血がグルグル)が表紙についたジャポニカ学習帳が買えなかった。クラスメイトの99%がこのアゲハの表紙の学習帳を使っていたけど、私はアゲハじゃないジャポニカ以外の学習帳を使っていた。
ある日、いつものように学校に行って、ランドセルの中から教科書とノートを机に入れようと、ランドセルを開けると、その一番手前にあるポケットの中にノートが入っていた。それを引っ張り出して
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
なんと自分が使っていないアゲハの表紙のジャポニカ学習帳が入っているじゃないか! 教室は私の悲鳴で何だ? 何だ? の大騒ぎ。私は半分泣きながら「何でもない・・・何でもない」とランドセルの奥にそのノートをしまった。可哀想な私。誰がそんなことを? kaoだ。昨日の夜、叩き合いの大ケンカをしたその腹いせに入れたのだろう。さすがだわ、kao。私はこのジャポニカ学習「蝶」で、平手50連打受けた以上のダメージを食らったわけだ。
でもさ、普通一般的に苦手なものの代表であげられるのが、ゴキブリでしょ? でも、普通の人のゴキブリへの恐怖心と私の蝶に対する恐怖心は、言っとくけど全然レベルが違うと思う。「同じにしないでよねーー」と葉巻くわえながら言いたい気分だ。だって皆さんのはただの「キャー」でしょ?
私は小学校時代、学校に遅刻しそうになると「靴の底にアゲハがくっついている!」と想像しただけで、そりゃバカボンに出てくるおまわりさんのような俊足で学校に走っていくことができたし、もし今運転中、車の中に蝶が入ってきたら、それがどんな場所であっても車を乗り捨てて帰ってくるだろう。
高校生の時、当時流行っていた靴をおこづかいで買って履いていたとき、少し私の後方を歩いていた友人が「あっ! でも違う? えっ? でも・・・」私の足元を見ながら、そんなことを言った。「なに? どうかしたの?」「う・・・・ん、何か今道で死んでいたモン白蝶踏んだような気がして・・・」
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
「踏んだかもしれないし、わかんない! 見てみて」と彼女は何度もそう言ったけど、もしかしたら蝶がついているかもしれない靴底を見ろって? そんな拷問を私に? その友人を前に私は大パニックを起こし、走り出した。勿論、踏んだかもしれないと言われた左の靴だけその場に残して・・・だ。蝶が潰れているかもしれない靴底なんて、どうしたら見られるというのか! 仮に踏んでいたとしたらもうその靴は2度と履けないじゃない! それに仮に踏んでいなかったとしても、今後その靴を見るたび、蝶のことを思い出さないといけなくなるじゃん! 「これくらい蝶が嫌いなのですよ〜!」葉巻プハ〜〜。
まだある。うちの娘は虫が大好きだ。カブトムシ、クワガタ、かなぶん、バッタ、コオロギ、団子虫なんでも家に持ち込んでくる。それは許可している。全然OK! 子供の頃から自然に親しむ、良い事だ。しかし、蝶だけはダメ! 絶対にダメ!
「蝶を持ち込んで来たら、多分ママはその場で死ぬ・・・」そう小さい頃から教えこんできた。虫好きな娘なのに、我が家には小学生のバイブル「昆虫図鑑」はない。買い与えてやってないのだ。昆虫図鑑と言ったら大抵蝶が表紙だったり、表紙じゃなくても蝶のページが沢山でしょ? 今家にある季節の図鑑というやつにも「春」「夏」には蝶が登場している。私は自分の目に入らないようにきちんと蝶のページに付箋をして、そこは開かなくていいようにしてある。
自分で言うのも何だが、私を殺すのは簡単だ。電話ボックスくらいの部屋に私を閉じ込め、アゲハを10匹、いや3匹放てば、多分1日以内にストレスから発狂して息絶えるだろう。自分の手を汚さずにいとも簡単に私を殺すことができる。私は親やkaoに「もし私が謎の死を遂げたら、身体に蝶の粉がついていないか調べて頂戴。そしてそれがついていたら犯人は私のごく近いところにいる人間だから・・・よろしくね」と言っているほどだ。
蝶が怖い!
我が家には狭いながらも庭があって、私は3年前までいっぱしのガーデナーとして、庭の手入れに精を出していた。うちに来る人来る人「わー綺麗なお花〜」「手入れが大変でしょ?」とマイ ガーデンを誉めて下っていた。
手入れは結構大変だ。花ガラを摘みとったり、雑草を小まめに抜いたり・・・。だいぶ前のことだけどある日、小雨が降り始めたのだが、どうしても雑草が気になり、このくらいの雨なら大丈夫かと庭に出て、雑草抜きに精を出していた。3歳になった娘も「私も出る」と一緒に庭に出て、私は雑草抜き、娘は三輪車かなにかで遊んでいた。その時だった。丁度、花壇の横に生えている雑草を抜こうとしたら、いきなり蝶が私目掛けて襲ってきたのだ。
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
今思えば、草陰で雨宿りしていたのだろう。いきなり人間の手が伸びてきたから相手も咄嗟に飛び出してきたのだろう。しかし、私は恐怖から過呼吸に陥り、もしかしたら蝶が私の体に張り付いているかもしれないという想像から大パニックを起こし、全身バタバタさせながら
(蝶を振り払う)泣き叫び、全速力で部屋に入ろうとして、ベランダのサッシに体当たりしてしまった。そうだ、パニックで平常心を保てず窓が閉まっているなんて考える余裕もなく、とにかく部屋に逃げなきゃ! と思ったらしい。
ドーーーーン。窓に体当たりして跳ね返り尻餅をつきながらも泣き叫ぶ妻、その光景を家の中から見ていた家人は
「現実か漫画を見ているのか我が目を疑った」と言った。また3歳の娘は母の大パニック、そして母は自分を見捨て部屋に逃げて行ったことがショックだったようで1人庭で大泣きしていた。家人は言った。
「あれ見てわかったよ。あんたは大災害に遭ったとき娘を置き去りにして1人逃げて行くタイプだってことがね」
違うって。大蛇、クマ、ライオンが現れようと、勇敢な私は金太郎のごとく立ち向かって行くって! でも、蝶ばかりは勘弁してよ。蝶は・・・蝶だけはいくら可愛い我が子と言えども、見捨てて1人逃げさせてもらうわ。強化ガラスによって全身打撲程度で大事には至らなかったが、打撲の痛みより、あの蝶が私に襲い掛かってきたときの衝撃の方が私の体にすごいダメージを与えた。その日以来、雨の日の庭には下手には近づかないことにした。
そして、その1年後(今から2年前)ガーデーナー生命を絶つあの事件は起った。
ある早朝、私は庭の手入れをしようとベランダに出たその瞬間! 目の前には私の想像を絶する光景を広がっていたのだ。
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」
バタバタバタ・・・・。(足から湯気出てます)泣きながら寝ている家人を叩き起こした。しかし、喋ろうにも声が震えてうまく喋られない。
「に、に、に・・・・庭・・・で!!!! 庭でーーーーーー(号泣)」
「庭がどうしたんだよ!」
「に、に、に、庭で・・・・し、し、死んで・・・いる・・・死んでるの! 死んでるのーーーーー(号泣)」
「何が! 何よ! 何が!」家人も寝起きいきなり大パニックになった。
「ち、ち、ち・・・・蝶・・・・ア、ア、ア、アゲ・・・アゲハがーーーーー(号泣)」
「ふざけんじゃないよ!(いきなり江戸っ子入ってます)アゲハごときで驚かせるなよ!(マジ切れ!)」
「だってーーーーー(号泣)は、は、早く、早く〜何とかしてよーーーーー」
それを言うのが精一杯で後は布団をかぶり、布団の中でずっと泣いていました。現実逃避するために人間が布団にもぐる生き物であることを痛感しました。怖くて、怖くて、そしてあの強烈で残酷な地獄絵のような惨状が目に焼きついてガタガタ震えていました。
家人は庭に行き、その現場を処理して戻ってくると
「なんかさ、ただ死んでいただけじゃなくて、猫にやられたみたいでボロボロに」
「ギャーーーーーーーーーーーーー!! やめて! やめて! 話さないで! (号泣)」
逆切れして、家人を推定20発くらいロボコンパンチで叩いていました。
気を失いそうになりました。身体は恐怖からガタガタ震えるし、目に焼きついた残照はどんなに消そうにも消せないし。今これ書いている手だって振るえ、体の中を冷たい血がグルングルン状態です。
それ以来、我が家の庭は以前とは比べものにならないほど荒れ果てている。その事件の後遺症で2ヶ月間は庭には出られず、その後雨も何度も降ったし、徐々に徐々に庭に出て行けるようになったのだが、家人がその死体? をどこに埋めたのかがわからないから庭をいじれなくなってしまったのだ。聞けばいいじゃん! とお思いでしょうが、聞くのが怖い。あそこに埋まっているんだ・・・と知ったら、常にその場所にあれが眠っているという恐怖心に縛られそうだし、でも、どこに埋まっているのかわからないからどこにも移動できないのだ。もし雑草を抜いていて、その下に・・・、丁度現場がテラコッタの上だったこともあり、いくら家人が片付けたと言ってもかすかな残骸がまだテラコッタの間に挟まっていたとしたら・・・、庭に出ようと思うと血圧がどんどん下がって(上がって?)、体の中にマイナス的な毒素がグルングルン掛け巡っていくのだ・・・。
そのようにして、今ではマイ ガーデンは、あのアゲハの死体のせいでどんどん荒れ果て、私はガーデンそのものにすっかり興味を失ってしまった。
家人に話した。
「ねぇ! kaoが見たメンタルERに私も出てみたいよ。そしたら、私の前世に絶対に絶対に蝶に関する謎が潜んでいると思わない? 」
「そうだね・・・」お化けとか前世とか全然興味がなく信じていない家人は関心がなさそうだ。
「ちょっと! あなたに世の中でこんな恐怖なものってある? ねぇある? その物の存在が怖くて世の中生き辛いってものがある?」
「うーーーん、ないかもね。ゴキブリは苦手だけど、そんな泣くほどのもんじゃないし・・・」
「でしょ? 来週火曜日その番組を見て私は応募してそして採用され、番組に出る。そして、その謎を解いてもらってその呪縛から解放されるの! 素晴らしいことじゃない?」
「まぁね・・・」
「あっ、それから私を殺すなら蝶の拷問はやめてね。お願いだからそんな苦しい再期は迎えたくないの。お願いだから蝶で殺すなら弾丸一発胸に打ち込んでくれた方がいいからね! よろしくね!」
「あんたさ、何で夫に殺人依頼なんてするわけ? 何で俺があんたを殺そうとするわけ?」
「とにかく! どんなに私のことを嫌いになっても、憎憎しく思っても蝶を使っての復讐だけは勘弁してってことだから!」
で・・・、メンタルERに応募したかって? それが、どうもその週限りの番組だったらしくて、番組表どこを探したってないのですよ。
仕事の合間、ワードでせっせと私の悩みを書き綴ってきていつでも応募できる状態で待っていたのに。フジテレビさん、お願い、私をこの恐怖の呪縛から救ってーーーーー!
でもさ、前世って・・・蝶により恐怖を植えつけられた私の前世って? アゲハに食い物にされたみかんの木? それともキャベツとかいう? それを知らされるのも・・・怖いかも・・・。
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