| まず、家人の捨てられないコレクションの中で私が一番に捨てたいのが
カセットテープ
だ。そもそも我が家にはすでにカセットテープを聴かれる機械(デッキ)などない。それなのに恐らく50本以上もあるカセットテープを捨てるな! と言い張って聞かない。それもマスターテープならまだ! 捨てられないというのならわからなくもないが(わかんないけど)、家人が頑なに捨てるな! と言ってやまないのは、自分で録音したテープなのだ。
その一つを紹介しよう。
表紙には家人の文字で「ベストヒット歌謡曲」なんて書かれている。
1. 伊○つかさ 少女人形
2.沖田浩之 E気持ち
という具合。「ねぇねぇ! これ捨てようよ〜」
「何でだよ! また聴きたくなるかもしれないじゃん!」
「ちょっとーーーーー伊○つかさの少女人形なんて、あなた! もう一度聴きたいわけ? 捨てていいでしょ?」
「ダメ!」
私からすれば意固地になっているとしか思えないのである。自分の好きな歌手とかその時代の大ヒットソングとかだったらまだわかるけどさ、少なくとも家人の趣味に「伊○つかさの少女人形」なんてないのにさーーー。それともいまだ熱狂的な隠れ伊○つかさファンなのだろうか? ゾゾーーーーッ。
次に捨てたいものは
DCブランドの変なTシャツ
だ。家人には消耗品という価値観がないのか、大学時代に流行っていてDCブランドのTシャツを着さえしないもののいまだ捨てられない。家人は「これは俺がバイト代を貯めて買ったTシャツなんだから! 大学生の俺には高かったんだから!」と言うが、もう元は充分にとったじゃないか。Tシャツなんて所詮消耗品、それも今時DCブランドなんてさ・・・。このTシャツ、彼は新婚旅行先にまで持ってきていた。私は付き合っているときから彼がこのTシャツを好んで着ているのが嫌で、結婚したのを機会にもうこのTシャツと決別させようと、新婚旅行先のホテルのゴミ箱にこっそりこのTシャツを丸めて捨てた。
しかし、「えっ? 何で? 何で俺のTシャツが捨ててあんの?」そのTシャツを発見した彼はすぐにスーツケースの中に収めた、あぁ・・・。その後、彼を説得して「もうこのTシャツは流行遅れだし、着ないほうがいいよ」と説得し、あの新婚旅行以来家人が着ることはなくなったが、でもいまだ捨てられないのである・・・。あぁ・・・。
この他にも家人は捨てられないものが沢山ある。
一度気に入ったものを手放すことがなかなかできないのである。娘がおしゃぶりを手放すとき、そりゃ大変な説得と根性を要したけど、これと同じくらい、いやそれ以上の説得が必要なのだ。
昔、むか〜し、男のセカンドバックというのが流行った時代があったでしょ? 私の記憶が正しければ、私が高校生くらいの時にポロシャツの襟立てて、男たちは皆片手にセカンドバック(セカンドポーチっていうのか?)を持っていたように思う。それがお洒落だったんだよね。ところがカジュアルスタイルが流行るに連れ、男の子たちは皆手ぶらで歩くようになり、段々とセカンドバック持っている率が下がっていき、恐らく95年になればセカンドバックをぶらさげてる男は集金のおじさんか、そっちの筋の強面の方だけになったように思う。
しかし、当時新婚だった私のダーリン(現・家人)の手にもそのセカンドバックがぶら下げられていた。今なら「ちょっとダサくない? それやめなよ」と言えるものの、当時は新婚ホヤホヤでまだ遠慮というものが私の中にもあった。どうやって時代はセカンドポーチを受け付けなくなっているということを伝えるべきか私は日々悩んでいた。
それはそんなに親しくない方の「歯海苔」と似ている。焼きそばかたこ焼きか・・・前歯に海苔が燦然と光り輝き、私は相手の前歯から目が離せない。しかし、親しい間柄なら簡単に「歯に海苔ついてるよ」と教えてあげることができるものの、そんなに親しくない間柄の相手になかなか言い出せない状況ってあるでしょ? でも、ついてるのに教えてあげないで、相手が家に帰って鏡を見て「何よ、教えてくれればいいのもの!」と思われるのも・・・でも・・・言ったらその場は少し相手を恥ずかしがらせてしまうだろうし・・・と悩む、それととても似ていた。
試しにやんわりとこう伝えてみた。
「ねぇそのポーチももうかなり古くなっているから・・・そろそろ・・・(捨てたら?)」すると家人は「じゃ新しいの買ってくれるの?」ヒェーーーーー!! こう出てくるとは想像もしていなかった。私は悩んだ。そしてある時、同期に相談してみた。
「ってさ、どう思う?」すると同期は
「信じられない! 今時そんなセカンドポーチぶらさげている若者なんていないよ! ゆかりちゃんよく旦那がそんなの持っていて平気で歩けるね! はっきり言ってやめさせなよ!」
「それが簡単に出来ればあなたに相談なんかしてないじゃん・・・私だって今までやんわりと遠まわしに言ってみてはいるものの・・・」
「じゃ勝手に捨てればいいんじゃない? じゃなければ破くとか・・・」
「でも、また新しいの買ったら?」
「もーーーそんなの売ってないよ!」
「売ってるって!」
私は悩んでいた。
そして遠まわし作戦から1年が経ち・・・徐々に遠慮というものがなくなった頃、私は家人にきっぱりとこう言った。
「ねぇ、もーーーそんなポーチぶら下げている人間ははっきり言っていない! いたとしてもダサい! お願いだからもうやめようよ!」
すると相手も私に遠慮がなくなっているもんだからムキになって反論してきた。
「じゃぁさ! 財布も定期も手帳もタバコも・・・このセカンドに入っているものはどうすりゃいいんだよ! えぇ!」
どうすりゃいいって・・・。時としてお洒落とは不便なものであることを家人はわかっていない。
私は作戦として、今度は家人が入っているバスケットのサークルの若い女の子たちに頼むことにした。家人の練習についていき、20代前半の若い女の子たち数人にこう話を切り出した。
「ねぇねぇ、あのセカンドポーチどう思う?」
「えっ・・・・」皆言葉を詰まらせてしまった。
「いいの! 遠慮しないで言って頂戴! ダサいと思うでしょ? 私も妻としてあのセカンドをやめさせたいと思っているんだけど、本人にその自覚がないんだから、お願い正直に言って!」そう言うと、皆堰を切らせたように
「いや、ダサいですよ、あれ! 今時持っている人なんてどこにもいませんよね。堅気の人間は」
「自分の彼だったら絶対に嫌ですね」
と正直に語り出した。そこで私はこう言った。「でしょ? ありがとう。だったら、今日練習が終わったら彼に言って欲しいのよ。そんなセカンドポーチ持っているのはダサいってことをね! 私がいくら言っても聞く耳持たないから。若い女の子から言われれば奴もこたえると思うから」
「えっ? はい・・・」
ところが練習が終わっても彼女たちは一向に家人に話しかける様子は見られなかった。そして1人の女の子が私に近づいてきてこう言った。
「すいません・・・やっぱり本人前にすると・・・なかなか正直なこと言えなくなっちゃって・・・」
「何も躊躇いもなく持っている姿見ちゃうと・・・」
何よ! ダメじゃん!
かくして家人はどのくらい私のアドバイスを聞かずにセカンドポーチを持ち続けたことだろう。恐らくかなり長いこと愛用していた。じゃ一体どうやって家人はセカンドポーチを持ち歩かなくなったのか。それは私の気の強い同期のお陰である。同期が数人彼を取り囲んで
「いい加減にしなよ! そんなポーチ今時持っている人なんていないよ!」
「ダサすぎる!」
「私なら恥ずかしくて離婚問題に発展するね」と集団で説得してくれたのである。
セカンドポーチの永きに渡る交渉を考えると、今回の引越しで家人が処分できるものって・・・ないんじゃないかと私は目の前が真っ暗になるのである。
♪夢をみる〜人形と〜♪ 伊○つかさの少女人形が聴きたいなら私、いつでも歌ってあげるのに・・・モノマネ得意だったし・・・。
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